- 日時: 2021/10/07 21:42
- 名前: 厄怪 ◆raB8gxi4Jw (ID: 8b.sT7dp)
エロスは激怒した。必ず、かの異常性癖の王を除かなければならぬと決意した。エロスには性癖がわからぬ。エロスは、遊郭の遊女である。尺八を吹き、男と遊んで暮して来た。けれども寝取りに対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明エロスは遊郭を出発し、野を越え山越え、億里はなれた此このセークスの市にやって来た。エロスにはちんこも、まんこも無い。性感も無い。八十六の、認知症と二人暮しだ。この認知症は、村の或る律気な一牧人に、近々、処刑される事になっていた。公開処刑も間近かなのである。エロスは、それゆえ、認知症の棺桶やら献杯の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。エロスには馬鹿の友があった。ケツマンセクスである。今は此のセークスの市で、枕仕事をしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しくヤらなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにエロスは、まちの様子をいやらしく思った。もっこりしている。もう既に日も落ちて、男女が盛んなのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけにいやらしい。のんきなエロスも、だんだん興奮して来た。路で逢った若い衆をつかまえて、何回ヤったか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆がマラをしゃぶって、まちは賑やかであった筈はずだが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて真性包茎に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。包茎は答えなかった。エロスは両手で包茎の皮をむいて質問を重ねた。包茎は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。 「王様は、妻を寝取ります。」 「なぜ寝取るのだ。」 「寝取られて興奮するだろう、というのですが、誰もそんな、性癖を持っては居りませぬ。」 「たくさんの人妻を犯したのか。」 「はい、はじめは弟の妹婿さまを。それから、御自身のお世嗣よつぎの妻を。それから、妹の婿さまを。それから、異国の黒人さまを。それから、飼い犬を。それから、賢臣のアナルキス様を。」 「おどろいた。国王は乱心か。」 「いいえ、乱心ではございませぬ。人の性癖を、理解する事が出来ぬ、というのです。このごろは、皆の下心をも、お疑いになり、少しマニアックなプレイをしている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めば部屋に連れられ、犯されます。きょうは、六人寝取られました。(一夫多妻制)」 聞いて、エロスは激怒した。「呆れた王だ。生かして置けぬ。」 エロスは、単純な女であった。ローターを、入れたままで、のそのそ王城にはいって行った。たちまち彼女は、巡邏の警吏に捕縛された。調べられて、エロスの懐中からはエグいディルドが出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。エロスは、王の前に引き出された。 「このディルドで何をするつもりであったか。言え!」暴君ペニスは静かに、けれども威厳を以もって問いつめた。その王の顔は蒼白そうはくで、玉袋のしわは、刻み込まれたように深かった。 「市を暴君の手から救うのだ。」とエロスは悪びれずに答えた。 「おまえがか?」王は、憫笑した。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの背徳感がわからぬ。」 「言うな!」とエロスは、いきり立って反駁した。「人のパートナーを寝取るのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は、民のパートナーさえ寝取って居られる。」 「寝取るのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」暴君は落着いて呟つぶやき、ほっと溜息ためいきをついた。「わしだって、平和を望んでいるのだが。」 「なんの為の平和だ。自分の欲を満たす為か。」こんどはエロスが嘲笑した。「罪の無い人を犯して、何が平和だ。」 「だまれ、下賤の者。」王は、さっと顔を挙げて報いた。「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、ねとられてから、泣いて詫わびたって聞かぬぞ。」 「ああ、王は悧巧りこうだ。自惚ているがよい。私は、ちゃんと犯される覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、エロスは足もとに視線を落し瞬時ためらい、「ただ、私に情をかけたいつもりなら、犯すまでに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の同居人を、殺してやりたいのです。三日のうちに、私は村で公開処刑を行い、必ず、ここへ帰って来ます。」 「ばかな。」と暴君は、嗄た声で低く笑った。「とんでもない嘘うそを言うわい。逃がした嫁が帰って来るというのか。」 「そうです。帰って来るのです。」エロスは必死で言い張った。「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。村の人が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にケツマンセクスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人妻としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人をブチ犯しして下さい。たのむ、そうして下さい。」 それを聞いて王は、残虐な気持で、そっと北叟笑えんだ。生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきに騙だまされた振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男を、三日目に犯してやるのも気味がいい。人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を開発してやるのだ。世の中の、正直者とかいう奴輩やつばらにうんと見せつけてやりたいものさ。 「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと犯すぞ。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」 「なに、何をおっしゃる。」 「はは。いのちが大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」 エロスは口惜しく、地団駄踏んだ。ものも言いたくなくなった。 馬鹿の友、ケツマンセクスは、深夜、王城に召された。暴君ペニスの面前で、佳き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。エロスは、友に一切の事情を語った。ケツマンセクスは無言で首肯き、エロスをひしと抱きしめた。友と友の間は、それでよかった。ケツマンセクスは、縄打たれた。エロスは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。
ノルマ達成(ほぼコピペ) |