Re: B1同好会・伍の宴( No.230 )
  • 日時: 2021/11/27 20:04
  • 名前: 姫林檎のサブ ◆H6AhLM7BWE (ID: m92dXLTx)

よっ。
面白いの見つけたから是非やってね☆

『仲良くなりたい』
俺が住むマンションには、エレベーターが1基しかない。

 それもなんだか薄暗いし、定員は5人となっているが、3人も乗ると窮屈に感じるような手狭なものだ。

 だから気持ちは分かるのだが、他の住人と乗り合わせるときに、嫌な顔をしたり、混んでいるとあからさまに舌打ちするような奴もいて、それはどうなんだと思ってしまう。

 俺が内心狙っている、清楚な感じの女子大生っぽい女の子がいるんだけど、彼女なんか扉が開いて、俺が中に乗っているのに気づくと、すごい顔で見てくる。

 俺がなにか悪いことでもしたか? と聞きたくなるが、視界にも入れたくないとばかりにこっちに背を向けてしまう。

 毎回、足早に降りる彼女の背中を見送るたびに、俺がそんなに気に食わないならエレベーターを使わなきゃ良いのに……と思うのだが、10階の住人である彼女としてはそうもいかないのだろう。

 俺は心に決めていた。いつか、ちゃんと彼女に声をかけよう。話しかけて、会話を交わせばきっかけになる。経験から分かっていた。

 その日は、3階に住むカップルと7階の老夫婦と一緒だった。彼女も二人きりでなければ良いのか、こちらを睨むようなことはなかった。

 彼女は、自分が住む最上階まで乗らず、夫婦の後を追うように7階で降りてしまった。

 俺は思わずそれを追いかける。

 非常階段を上る彼女に、下から声をかける。

「なんでそんなに僕を避けるんですか?」

「ねえ、あなたと仲良くなりたいんです」

「僕が何かしましたか?」

「聞いてくださいよ。見えてるんでしょ?」

 結局彼女は、俺と会話を交わしてはくれなかった。

 なんだ、ルールを知ってたのか。