ベイリーフさん制作の鬼殺鬼・第1話載せておきます
鬼殺鬼
1.鬼化
………
……
…
彼は新山佑 14歳
特に変わった特徴はない普通の男の子だ。
ただひとつ変わってると言うならば、彼は生まれつき身体能力が普通の人間より高いくらいだ。
彼には幼馴染がいた。
名前は高原綾音
幼稚園より前、赤ちゃんの頃からの付き合いだ。
家が隣という典型的な幼馴染だ。
趣味もよく合い、まるで仲のいい兄妹のようだった。
そんなある日…
「大変だ!綾音がいない!」
「え!?自分の部屋にいるんじゃないの?」
「それがいないんだ!どうしよう…!」
綾音が消えた。
綾音の父は慌ててどうすればいいか考えられなかった。
それに対し母は冷静だった。
「とりあえず家中探して、いなかったらお隣の新山さんにも外を探すの手伝ってもらいましょう。佑くんなら行く場所がわかるかもしれないから。」
家の中にはいなかった。
そして母の言う通り、新山一家に助けを求めて一緒に探してもらうことになった。
佑は心当たりがあった。
「もうすぐ俺の誕生日…いつも用意してくれてるし、最近はテストで忙しかったから…もしかして…?でも何で連絡してないんだ?」
毎年お互いに誕生日を祝い合い、プレゼントを渡し合う仲の二人。もしかしたら何か用意するために一人でデパートに向かったのかもしれない。
だが今は午後10時、いつも行っているデパートは10時半にはしまってしまう。なぜこんなぎりぎりの時間に?
佑はたくさんの疑問を重ねながら必死に綾音を探した。
「綾音ー!どこだー!俺だ!佑だ!返事をしてくれー!!」
探しているうちに近所の公園に着いた。
ここは思い出がたくさんつまった場所だ。
幼稚園時代は遊具で遊び、小学生時代は縄跳びだったりサッカーだったり
どちらもお互い上手くはなかったが、とても楽しかった。
中学生になってからはここで遊ばなくなったが、たまに足を運ぶ。
そこに人影がひとつ見えた。
暗くてよく見えない、だが髪が長くて佑より少し小さい。シルエットが綾音にそっくりだった。
「綾音…か?」
人影は声に反応し、近づいてきた。しかもものすごいスピードでだ!
人影の正体は綾音だった、だか様子がおかしい。
なんと綾音は佑に襲いかかってきたのだ!
「ヴヴヴヴアアアアアア!!!!!」
「うわああああ!!??」
佑は咄嗟にかわした、だが間髪いれずに再び襲いかかってきた!
「ヴヴヴ!!」
「どうしたんだ綾音!何があったんだ!」
色白の肌、赤い目、流れる血の色が青い、いつもと違う。
まるで何か危険な薬でも入れられたかのようだ。
すると後ろから誰かが近づいてきた。
「大丈夫か少年。」
男の声だ。初めて聞く声だ。
「今助けてあげるよ。」
すると男は綾音の攻撃を弾き返し、腰に据えていたナイフを綾音に突き刺そうとした!
「!? やめろ!!」
佑は咄嗟に手が出た。男の腕を掴み、そのまま地面に叩きつけた。
「何故だ!あいつは君を殺そうとしているのだぞ!」
何故だはこっちの台詞だ!何故人を刺そうとしたんだ!
「今すぐナイフを手放せ!人殺しめ!」
「彼女はもう人じゃない!鬼だ!」
!?
「何を言っているんだ!人間だ!綾音は人間なんだ!」
すると綾音は俺の首に爪を刺した!
「ぐっ!?」
何かが流されていく、佑は咄嗟に振り払った。
何かがおかしい、意識が少し薄れてきた。毒か?何だ?
「まずい、この少年も鬼に…」
佑は何がどうなっているのかわからなかった。ただ一つ、綾音を守らないとということだけ考えていた。
男は綾音に掴みかかった、そしてナイフを構えた。
「早く殺して戻らねば…!」
「…やめろ!!」
佑は男を突き飛ばした。だが突き飛ばしたとはいえ、男は体が宙に浮くほど飛んだ。
佑は男が宙に浮くほど飛んだことに驚いている。それと同時に男に対する微かな殺気が沸いた。
だが佑は殺気を気にもせず、綾音の状態を確認した。
傷は負っていない、だが首の後ろに注射跡が残っていた。
「いってえなぁ…いい加減にしろ!」
男は怒りに身を任せ襲いかかってきた。
「隙だらけだ!」
佑は男の懐に肘を強く当てた。男はその衝撃で吹っ飛び、木に打ち付けれて失神した。
「大丈夫か綾音 お父さんたちが心配してるぞ」
綾音は唸りながらも答えた。
「…家に…帰っ…たら……お父さん……たち…殺しちゃう………だから……帰れない…」
佑は状況を整理した。
綾音が突然襲いかかってきた、そして綾音は殺してしまうと…
「誰かに何かされたのか?」
「…魔女……薬………打たれた……………助け…………て…………」
綾音は泣きながら訴え、そのまま眠ってしまった。
「魔女…?そいつが綾音をこんなにしたのか…?」
佑は魔女を探すことを決意した。
その時、後ろからまた声がした。
「もしかして鬼になりたてですか?」
また男の声だ。けどさっきの男じゃない。
「え?」
「え?あなた鬼じゃないんですか?鬼そっくりな見た目してますよ?」
男は鏡を見せた。確かに見た目がいつもの自分ではない、綾音と同じ特徴の目をしている。
「お二人はまだ救えますね、もとに戻れますよ」
「え?えっと…なら戻るならどうすれば…」
「これを飲んでください あらゆる症状を消し、治療してくれますよ」
男は薬を渡し、消えた。
一粒だった。これじゃ俺しか助からないじゃないか
佑は薬を半分に割った、そして綾音を起こして半分飲ませた。
「綾音、これで戻るかもしれない。飲んでくれ」
次第に肌の色、血の色が元に戻り、微かな殺意が消えてきた。だが目は元に戻らなかった。
「半分だからかな…」
綾音も佑と同じ、目だけ元に戻らなかった。
「佑…?大丈夫…?」
「俺は大丈夫だよ」
薬が半分しか飲めなかったが、生活に支障はなさそうだ。
佑は綾音と一緒に親の元へ戻ることにした。
親に鬼になったなんて言えない。佑と綾音は鬼であることを隠し通して生活することにした。
………
……
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