【3ぱぱさんのご出張】その6
いよいよ名古屋で本格的に仕事がはじまる。工程は大きく3つに分かれている。今は第1工程の中盤だ。
先輩「3ぱぱ!例の図面だけどな、とりあえず第1と第2は出しておいたわ。第3工程の図面が何処か迷子でな。お前の課長が送ったメールを転送してくれれば助かるんだけどな。俺も忙しいから頼むよ。」
3ぱぱ「一応課長に連絡してみます。」
とりあえずしばらく使う図面はあるが第三工程の図面も確認したいので私の忠実なシモベ(若ハゲ)に電話をかける。
3ぱぱ「もしもし若ハゲか?」
若ハゲ「3ぱぱさん。どうしました?」
3ぱぱ「お前どうせスタバでサボってる時間だろ?」
若ハゲ「ひどいな〜。スタバにはいますけどサボってるって言われるのは心外だなー」
3ぱぱ「うるせー!今すぐデスクに行って課長にパソコンから図面引っ張り出させろ。かなり前に名古屋からメールが来てるはずだから。」
若ハゲ「デスクに電話してくださいよー。」
3ぱぱ「この時間デスクは課長一人だろ?お前はスタバでサボり。他の人は一生懸命外を回ってる時間だよ。課長が滅多に電話出ないの知ってるだろ?
生意気にパソコンにロックかけるから遊びに行く前に捕まえて名古屋からのメールを転送してくれ。」
若ハゲ「わかりましたよ。いっつも俺ばかりブツブツ……」
若干不安は残るが若ハゲを信じるしかない………
施工する工務店さんも同じ図面を持っているはずなのだが今回きんにく先輩が途中で入院したゴタゴタで第3工程の図面をまだ貰っていない。
名古屋のデスクにいても溜まった仕事がある訳でもないので現場で作業している源さん達の元へ行く事にする。
3ぱぱ「こんにちは〜」
あばれる君「あ、お疲れっす。」
源さんの弟子あばれる君が答える。
源さん「…………」
3ぱぱ「源さん昨日は偶然でしたねー。奥さん若いじゃないですか〜。」
源さん「仕事中じゃ。関係ない話はやめてくれ。」
3ぱぱ「あ、すいません。でもまさか源さんがな〜。」
源さん「うるさいって言っとるじゃろ!」
3ぱぱ「は〜い。すいませ〜ん。」
源さん「おい!あばれる!そこ1ミリずれとるぞ!」
現場は時折聞こえる源さんの怒鳴り声と電動工具の音しか聞こえない。
3ぱぱ「あばれる君、お茶買ってこようと思うんだけどさ。源さん何かこだわりある?」
あばれる君「あ、源さんは麦茶しか飲まないっす。」
3ぱぱ「りょーかい。ありがとう。」
あばれる君「あと俺はファンタグレープでお願いします。」
3ぱぱ「ははは……あばれる君はファンタグレープね。」
まだ見習い中のあばれる君もちゃっかりしていた。頑固親父はこだわりがあるので根回しも重要だ。
3ぱぱ「源さん少しお茶しませんか?」
買って来た飲み物を差し出し少し休憩をする。まずは源さんに心を開いてもらわなければ……私の仕事は職人さんとの信頼関係が大事だ。
3ぱぱ「源さん子供は何年生ですか?」
源さん「ああ……2年生だったかな。」
3ぱぱ「うちの長男と一緒ですねー。うちは3人兄弟で毎日うるさくてね。」
3ぱぱ「リトル源君、喜んでくれましたか?」
源さん「あ、ああ………なんかゲームの事はよくわからんが何かお前さんから貰う約束したとか。」
3ぱぱ「帰る前に源さんの家にお邪魔しないとなー。」
マシンガントークで源さんを攻める。昨日Qちゃんに挨拶している時の源さんは別人だった。私の会社の人達は気難しいおじさんだと言っているが、人一倍真面目なだけだろう。きっと根は優しいただの親父だ。
3ぱぱ「源さん午後からは俺も手伝いますよ。」
源さん「何言っとる?設計の人間に出来る仕事じゃないぞ!」
3ぱぱ「大丈夫ですよ。これでも本社では現場に出ていつも職人さんに鍛えてもらってます。あばれる君より役にたちますよ。」
あばれる君「3ぱぱさん!そりゃないっすよー!」
源さん達にまじり現場で汗を流す。少しは心を開いてくれただろうか……
しかしこの日も第3工程の図面が手に届く事はなかった。
続く