【息子と親友の話】第八話
まいパパとキャンプに行く約束をしてからすぐの事だった。いつもの様に休日の午後にまいパパと庭でお酒を飲んでいた。
子供達は庭で遊び。嫁さん達は子供達を見ながら立ち話。
まいパパ「3ぱぱさん。この前約束したキャンプなんですけど行けそうにないです。」
3ぱぱ「どうかしましたか?」
まいパパ「実は………」
3ぱぱ「!!!」
まいパパ「家族には言ってないんですねどね………」
3ぱぱ「そ、そうなんですか………。」
スーパーサラリーマンらしい理由だった。5年間のドイツへの海外赴任だった。ドイツを拠点にしてEU圏内を飛び回るらしい。場所が海外なだけに家族を連れて行くつもりだが今の生活を満喫している家族に中々言えずにいた。
3ぱぱ「いつから行く予定なんですか?」
まいパパ「11月のはじめです。」
3ぱぱ「もうすぐじゃないですか!」
まいパパ「そうなんですよ……。今言っちゃおうかな。」
3ぱぱ「早く言った方が良いですよ。」
お酒を飲んだ勢いでまいパパは家族に海外赴任の事を伝える。
まいママは何も言葉が出ない。まいちゃんはよくわかってない様だ。
まいパパがまいちゃんに分かり易く説明する。
まい「ヤダ−!外国なんて行きたくない!!」
まいママ「ずいぶん急ね……仕方ないけど………ハァ………」
嫁「ドイツか………裏山………」
岡田家に起こった急展開。まいちゃんは中々現実を受け止められない。一人っ子のまいちゃんにとって康祐は兄弟の様なものだった。来年まいちゃんと一緒に小学校に通うのを楽しみにしていた康祐もショックを隠せない。そして私も同様だ。
まいちゃんと過ごせるのも後2カ月と少し。「まい」「康祐」「みらい」「おう太」「けん太」の5人は徐々に現実を受け止めて行くがまいちゃんが居なくなる寂しさも募っていく。
岡田家の海外赴任の日が近くに連れて華やかだった岡田家の庭も寂しくなって行く。沢山の花が植えてあった華やかな植木鉢は無くなり。まいパパの車も無くなった。植えてあった大きな木も手入れが出来ないからと切り落とされた。まいちゃんも現実を受け入れつつもたまに行きたくないとダダをこねて泣きじゃくる。
出発の2週間前に皆で長岡家に集まり送別会をする事になった。外でバーベキューから始まり飲み足りないおじさん達は家の中になだれ込み飲み直す。お母さん達は井戸端会議に熱くなる。子供達は庭や家の中を走り回る。
辺りが薄暗くなって来た頃ふと周りが静かな事に気がつく。子供達5人の姿がない………。
おう太のお父さんとけん太のお父さんは既に泥酔して昇天している。かろうじて意識のある私とまいパパ、お母さん達で子供達を探す。
………だめだ、子供達が見つからない……
続く。